古より伝統を受け継がれつつ進化してきた大工道具にも、近年はかなり変化がみられます。それは建築工法の変化と、値頃感のある輸入大工道具の増加等によるものです。結果として従来からの大工道具の国内生産量は大幅に減少し、それらを製造していた鍛冶職人の廃業や後継者不足を招いています。そのために以前はあたりまえに流通していた本職の要求に耐えうる大工道具を手に入れることが困難になってきました。
その中でも木工建築作業に欠かすことのできない玄能・金槌は、品質が外観で判断しにくいために安易な安物がでまわることとなりました。たとえば使っていて簡単に打撃面がかける、まくれる、もしくは木柄の仕込みが拙く直してもすぐにゆるんでしまう。最悪なものではバランスが悪かったり打撃面の角度が不適切で、最初から満足に使用できないものまでごく普通に販売されています。
このような状況のなかで現状に不満を持ちつつも我慢されている方や、そもそも玄能・金槌とはその程度のものであるという誤解を持たれている方も多いと思います。
本来玄能・金槌でも、よい刃物としていわれる「かけず、まくれず(曲がらず)、永切れする」というような必要条件があります。それは「かけず、まくれず」は当然として、使い手の意志に的確に反応し、正確で美しい作業を素早く長時間にわたり行うことができる高次元な性能が求められるのです。
またその隠れた性能が外観に程よく表現されていることも、所有する喜びを満足させる、道具の重要な要素になってくるのではないでしょうか。
そこで私の考える玄能・金槌に要求される条件を提案してみます。
1.信頼の置ける材料で造られていること。
2.頭の形状にゆがみが無いこと。
3.しっかりと鍛えられ、適正に調質(焼き入れ)されていること。
4.柄にゆがみがないこと。
5.柄の木目が通っていること。
6.柄の仕込みが丁寧でゆるみがないこと。
7.すがたかたちが美しいこと。
以上の条件がそろっているものを推奨します。
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