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求人連載　たった一人の継承者に向けて 未だ逢えぬ君へ送る・・・「心の章」

浩樹印　ダルマ玄能７０匁 ・みんなの共有財産 浩樹銘で仕事を始めて少したった頃のことです。 何時もお世話になっている問屋さんが、 訪ねてきて言うのです。 「これ預かってきたよ」と。 包みを開けてみると、 玄能の基本となる形状９種をそろえた師匠の８０匁鋼付玄能でした。 その問屋さんは金物小売店さんからそれを預かり、 私に届けに来たというのです。 その方はすぐに帰って行かれましたが、 私には何が起こったのかさっぱりと分かりません。 そこで、 それを託した金物小売店さんに電話で事情を伺ったところ、 「浩樹さんは親方（長谷川幸三郎さん）の下で勉強したのだから、 それを持っているべきです」と、 ご説明いただきました。 その時はそんなものなのかなと思う程度で、 深くは考えませんでした。 その後、 大工道具の名品を集めた展示会で、 その金物小売店さんが、 私の師匠の日本鉄折り返し叩き玄能を展示されていました。 それを私が手に取り見ていた所、 その方が言うのです。 「自分が引退する時には、 この玄能を浩樹さんに託します」 そして「玄能のことをよく知らない人の手に渡ると、 いじり壊されたり、 散逸したりするのが目に見えていますから、 しっかりと管理できる人の下に置いておきたいのです」と。 それを聞いて私は胸が熱くなりました。 きっとその方は、 こんな風に考えたのでしょう。 「たとえ自分がお金を出して買ったものであっても、 文化的価値のあるものはみんなの共有財産であり、 そういったものは然るべき所にあるのが一番良い」と。 私はそんな考え方の出来る人のお世話になっていることを、 とても誇りに思います。 そして今度は、 私が引退する時のために、 その資産を受け継いでくれる人を見つけておかなくてはいけないと、 気持ちを引き締めました。

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今日も読んでいただいて、ありがとうございました。

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