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・弟子入りの条件 その2


弟子入りの条件として、

第二に「これから暫くは私の言うことだけを聞くように」とも、

厳しく言い渡されました。

「今までに覚えてきた玄能・金槌に関する知識・技術・技能などは一旦全て忘れて白紙に戻すこと。

暫くは私の言うことだけを聞いて作業を進め、

私以外の人の話は聞かないように。

特に使用者との接触は極力控えること」と言われたのです。


そう言われて最初は戸惑いましたが、

今ではその意味がとても良く理解できます。

玄能・金槌に関する余計な知識があると、

師匠の言葉を素直に受け入れられないということです。

心をまっさらな状態に持っていかなくてはいけないのです。

また、

師匠以外の人の言うことを聞くのは、

師匠に失礼であるばかりでなく、

どうしても心に迷いが生じやすく、

ぶれてしまうのです。


それにもかかわらず、

私はある地元問屋の善意を装った卑劣な忠告に、

混乱させられたことがあります。

そのために私は一時的に仕事が出来なくなり、

師匠から出された課題を達成できなくなったのです。

それまでに出来た作業さえ、

突然出来なくなったのです。

例えて言うと、

急に呼吸の仕方を忘れてしまったかのようで、

何とも苦しく辛い経験でした。


暫くして立ち直り、

何とか課題も達成出来て師匠のもとを訪れた時には、

「あなたは途中下車(挫折)したものと思っていました」と言われたのです。

そこで事情を説明すると、

「だから私以外の人の話を聞いてはいけないと言ったでしょう」と、

とてもきつく叱られました。

おそらく師匠には想定内のことだったのでしょうが、

産地の鍛冶屋が悪い方向に行ってしまう最大の危機を、

とりあえずは乗り越えることができたのです。


私にしても他人のくだらない忠告など聞くつもりは無かったのに、

心に隙があったのでしょう。

自分の弱さを知る本当に恐ろしくも貴重な経験ができました。


以上のように、

産地で純粋に鍛冶屋を続けていくには、

様々な誘惑や障害があるのです。

それ故に、

高い志を持って鍛冶仕事を始めた多くの若者が、

さまざまな理由によりありふれた職人になったり、

辞めていったりする姿を多く目にしてきました。

理想を追い求めているだけでは、

生活が成り立たなくなる現実に怯えもするでしょう。

それでも大好きな事をやって生きていきたいと思えば、

その為の術は必ず見つけられるはずだと思っているのです。
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今日も読んでいただいて、ありがとうございました。
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