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  ヒツ穴抜き作業

第一章 玄能の出現
・ヒツ穴抜きの困難


この時期には、

穴大工の要望に応えるべく、

玄能を造る鍛冶屋は大変な苦労をした筈です。

材料となる鉄が入手しやすくなったとはいえ、

玄能を作るには

正確なヒツ穴(木柄を仕込む穴)を穿つ作業は、

避けて通れません。

現在使用されているような機械ハンマーはなく、

全て職人の人力ですから、

相当な体力とそれ相応の技術及び技能が必要になります。


そして、

私が考える一番の問題は、

高温に加熱した鉄に穴を穿つために使用する目打ち金(タガネ様の穴明け道具)の材質です。

現在のように、

高温に耐えうる「特殊鋼」(鉄に炭素以外の様々な元素を加えた合金鋼)など無い時代なので、

鑿や鉋の刃に使用する「炭素鋼」(鉄と炭素の合金である鋼)を使用したと考えられますが、

素材の特性上として高温にとても弱く、

200℃程度に熱しただけで軟らかくなり始めます。

ですから、

へたっては直し、

角がだれては直し、

焼入れ直しながら、

根気よく使用したのでしょうから、

全く気の遠くなる作業です。


現在、

私が使用している目打ち金の素材は、

600℃程度まで加熱しても軟らかく成り難い「熱間金型用鋼」です。

これとて、

どんなに手早く作業しても、

熱による変形は避けられず、

こまめな管理と手入れが必要になります。

ですから、

過去の工人の並々ならぬ苦労が、

私には容易に想像出来る訳です。




画像:100匁玄能用目打ち金 左から1番目打ち、2番目打ち、3場目打ち、4番目打ち、5番目打ち
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今日も読んでいただいて、ありがとうございました。
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