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・冷却水の温度についての考察 (1)


玄能・金槌の焼入れは、

蛇口からの水道水を直接掛ける掛け焼で行います。

この度はその水道水(冷却水)の温度について考えてみました。


水は冷たいほど冷却効果が高く、

良く焼きが入ると言われますが、

玄能の掛け焼には人肌温度が理想だと言われています。

人肌とは27℃〜28℃位の温度の事ですが、

これは水の入った桶にゆっくりと手を差し込んだ時に、

冷たさを感じなくなる温度のことで、

燗酒でいう「人肌」の35℃〜37℃とは違います。

実験として桶に水を張り、

少しずつお湯を足していきながら試してみると分かるので、

お暇な方は試してください。


なお、

適温が27℃〜28℃位というと、

少し温度が高すぎるのではないかと思う方もいるかもしれませんが、

蛇口から直接掛けるのですから、

そこには常に新しい水が供給されることになり、

冷却能力は思った以上に高くなります。

ですから直接水のかかる所は急冷され、

そこから流れていく水に冷やされたところは、

ややゆっくりと冷えることになります。


玄能の焼入れは、

この水の掛け方を上手く調整することにより、

強く焼きを入れたいところと、

そうでないところを作ることになりますが、

この加減を理想的に行うことが出来るのが、

27℃〜28℃位の温度と言うことです。


なお実際の作業では、

あまり急冷したくない所まで水が掛かってしまいますが、

急冷後すぐに行う徐冷の時に、

うまく冷やし方を調整することによって、

硬くしたくないのに急冷されて硬くなってしまったところを

あらためて軟らかくすることも出来ます。

ですから此処は腕の見せ所と言ったところでしょう。


なお、

冷却水の適温が27℃〜28℃位といっても、

このくらいの温度になると、

急冷温度(水を掛ける瞬間の温度)が高すぎた場合には、

水蒸気が盛んに発生して水をはじいてしまいます。

その結果、

充分に硬くならなかったり、

焼きムラになったりします。

かといって、

急冷温度を低くし過ぎると今度は焼きが全く入りません。

ですから、

冷却水の適温である27℃〜28℃位の温度を使いこなすには、

充分に焼きの入る温度で且つ、

出来るだけ低い温度を急冷温度としなければいけません。

その為には加熱した玄能の火色を見て、

その温度を見極められるように、

充分に鍛錬を積む必要があります。


よって、

鍛錬の足りない人は、

もっと低い温度の冷却水を使用した方が無難でしょうが、

そうなると、

水道水の温度が高くなる夏季には、

焼入れが困難になります。
今日も読んでいただいて、ありがとうございました。
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